過換気症候群(過呼吸)は、芸能人の方が発症してしまったりして、世間でもよく知られるようになりました。過呼吸を発症したことがある人、または、身近な人が発症した経験をもつ人は少なくなくありません。
過呼吸についての正しい知識と対処法を紹介します。
過換気症候群(過呼吸)とは?
人の身体では、酸素と二酸化炭素の割合が最適になるよう調整されています。
過換気症候群は、精神的なストレスや不安などから呼吸が荒くなり、肺が膨らみすぎてしまうことにより、息がうまく吐けず、苦しくなってしまっている状態です。息が苦しいため、さらに息を吸おうとして悪循環に陥ってしまいます。
主に、呼吸苦、両手の指先や唇のしびれ、めまい、手足の突っ張りなどの症状が現れます。ひどくなると、けいれんや失神を起こすこともあります。
また、血中の二酸化炭素濃度が過度に低くなると、呼吸が止まることもあります。大抵の場合は、すぐに回復し予後も良好ですが、過換気症候群の後に無呼吸の状態が続き、死亡した事例もあるそうです。
過換気症候群の原因となりやすい人
過換気症候群は、物事に対して不安を感じやすい性格の人や、性格に関わらず過度なストレスを抱えている人にも起こりやすくなっています。
過呼吸は、若い女性(中でも思春期の女子)に多く見られることが知られていますが、それ以外の人も過呼吸を起こすことは意外と多くあります。小学生くらいの子供などは、泣いていて呼吸が乱れ、過呼吸になってしまうこともあります。
また、マラソンなどの運動でも過呼吸を誘発してしまうことがあります。
過換気症候群で注意すべきこと
過呼吸の対処法として、ペーパーバック法(袋を口にあて、吐いた空気を吸い込む方法)が知られていますが、ペーパーバックを行うことにより、低酸素や意識障害が発生することもあるため、推奨されていません。
また、単に精神的なストレスや不安からくる過呼吸ではなく、熱中症、喘息、狭心症、気胸などの症状の一つとして現れる場合もあるため、注意が必要です。
過換気症候群の対応方法
過呼吸のきっかけとして、ストレスや不安があるわけですが、呼吸が苦しくなってくると、それに加えて息苦しさに対する恐怖も強く感じ、さらに不安や焦りが増強され、悪循環に陥ります。
ですから、まずはとにかく落ち着いて対応することが大切です。息を吐くことがうまくできない状況になっているため、呼吸をする際にゆっくり意識して息を吐くようにさせてください。
また、口をすぼめて、ろうそくの灯を消すように息を吐かせたり、おしゃべりをさせたりするのも効果的です。冷静に落ち着いて対応していけるよう心がけていきましょう。
特に、初めて過呼吸を発症した際などは、本人も周囲の者も非常に不安な気持ちになります。私は生徒の症状を見て「過呼吸かな?」と思ったら、まずは周囲の人の目に触れない場所に移動させます。他の生徒が何事かと周りに集まってきて騒ぐと、余計に不安をあおってしまうことになりますし、ごくまれに、過呼吸になっている人を見ていた生徒たちが集団で過呼吸を起こしてしまうようなこともあるからです。
次に生徒を座らせ、背中をゆっくりとさすりながら、吐く息が少し長めになるように「吐いて~、吸って」と声をかけていきます。「大丈夫だよ~」と、落ち着いた声で話かけ、呼吸が整うまでそばについているようにします。
しかし、時にはその発作が過呼吸なのか判断が難しい場合もあります。小学生の男子児童が、友達と言い合いをした後に泣き出し、足の痛みを訴えて立てなくなってしまいました。呼吸も荒くなり、パニック状態でしたが、ゆっくり浅い呼吸をさせ落ち着かせると、すぐにぐっすり眠ってしまいました。
発作時に、全く立てなくなってしまったことや、発作後にぐっすり眠ってしまったことが気になり、医療機関を受診してもらうと、てんかんの検査をすることになりました。結果的に、てんかんではなく過換気症候群だろうという診断になりましたが、症状によってはさまざまな病気を念頭に慎重に対応する必要があります。
また、過呼吸の原因となるストレスや不満、不安を解消していくことも大切です。気持ちを整理し、原因を明確にしていくことは治療にもつながっていきます。
過呼吸を起こすことがある方は、専門医を受診し、過呼吸や自分の身体や心についてよく知ること、カウンセリングを受けて自分の気持ちを言語化していくことなどを行ってみてください。