保健室登校から教室復帰は可能?2人の生徒を見て養護教諭として思うこと

保健室登校-生徒-養護教諭

前回、子供がどんな理由から保健室登校になるのか、保健室登校の子は保健室でどんな1日を過ごしているのかなどを紹介しました。現在、小中学生で不登校となっている児童生徒は約12万人。子供の数は減っているにも関わらず、20年前と比べてほぼ倍の数になっています。

  • 自分の子供が不登校になり悩んでいる
  • 仲の良いママ友の子が保健室登校をしているようだ
  • 自分自身が現在不登校で悩んでいる

など、不登校や保健室登校を実際に経験したり、身近にそのような子がいたりといった経験はかなり多くの人がもっているのではないでしょうか。そして、将来どうなってしまうのかと不安に思ったり、どうすれば教室復帰できるのか悩んだりしているのではないでしょうか。

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保健室登校をすることによって、果たして教室復帰をすることができるのか。私が実際に関わった保健室登校の子供のエピソードを紹介したいと思います。

優等生のAちゃん

 

保健室登校をしている4年生のAちゃんは、勉強もよくでき、しっかり者で何も手のかからない優等生の女の子でした。保健室では、自習や読書をするか、私とおしゃべりをして過ごしました。Aちゃんには仲の良い友達もおり、休み時間などには友達と一緒に保健室でおしゃべりをして過ごしたりもしました。Aちゃんはもともと明るく優しい性格で、友達からもとても慕われていました。

「なぜAちゃんは教室に入れないのか」「あんなに優秀だったAちゃんはどうしてしまったのか」はじめは不思議に思っていましたが、保健室で一緒に過ごすようになり、Aちゃんの気持ちを少しずつですが知ることができました。

Aちゃんは、幼い頃からおばあさんに育てられました。お母さんは近くに恋人と住んでおり、もうすぐ赤ちゃんが生まれます。Aちゃんは、「親や家族に感謝しないといけないってよく言うけど、私はお母さんに育てられていない」「お母さんがいるのに一緒に住めない。自分は捨てられた」と話していました。

こんな不安定な状態では、とても勉強どころではないですよね。Aちゃんは、自暴自棄になって何もやる気になれないことも多く、小学校を卒業するまで、教室復帰はできませんでした。結局、私がAちゃんにしてあげられたことは、保健室という居場所を提供することと、話を聞くことくらいでした。

Aちゃんは中学生になり、お母さんと一緒に暮らすようになりました。最初は不登校でしたが、徐々に学校へ行くことができるようになりました。

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勉強が苦手なBちゃん

Bちゃんは4年生の女の子です。勉強が大の苦手で、低学年の頃から登校しぶりがありました。高学年になると周りの友達と学力の差が顕著になり、本人もそれを自覚して教室に入ることが怖くなってしまいました。

Bちゃんは、2年生の勉強がなんとかわかるくらいの学力でしたので、4年生の勉強にはとてもついていけませんでした。しかも、ちゃんとやりたい気持ちが人一倍強い子でしたので、できないことを周囲の人に知られることを極端に拒みました。

不登校や保健室登校になる子は、このようなまじめな性格の子が多いように感じます。Bちゃんは、人が多い場所や慣れない人と接することが怖くなってしまい、お母さんに連れられて学校へ来ても、保健室以外の場所に行くことができない状態でした。

はじめの頃は、保健室でずっと泣いていたBちゃんでしたが、慣れてくるとおしゃべりをしたり絵を描いたりしてリラックスして過ごすことができるようになりました。Bちゃんのお母さんと担任とは頻繁に面談をしていて、Bちゃんが生きていく上で必要な「読み・書き・計算」を保健室で勉強すること、少しずつ教室へ行く練習をすることを当分の目標に保健室登校をしていくことになりました。

Bちゃんは一人で自習をすることができず、勉強していない間でも一人で静かに過ごすということができなかったので、やっていけるのか正直心配な面が多かったのですが、Bちゃんは、本人なりに一生懸命学校へ来て、勉強にも取り組み、本当にゆっくりですが、できることが増えていきました。

また、すぐには無理でしたが、体育の時間に見学に行ったり、みんながいないときに空っぽの教室に入る練習をしたり、スモールスップで学校内での行動範囲も広げていくことができました。

5年生になり、クラス替えをきっかけにBちゃんは教室に入ることができるようになりました。全ての教科の授業に参加とまではいきませんが、図工、学活、体育などかなり多くの時間を教室で過ごすことができるようになりました。Bちゃんは、しばらくの間がんばって教室で過ごしていたのですが、お友達との関係が思うようにいかず、保健室登校になったり教室へ戻れたりを現在も繰り返しています。

教室で学ぶことはそんなに大切なことなの?

AちゃんもBちゃんも教室復帰を目標に保健室登校をしていたわけですが、二人の話を読んで「保健室でも学校に来て勉強しているのならいいんじゃないの?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。実際に、保護者の方でも「嫌なのに無理して学校や教室に行かせる必要はない」と考えていらっしゃる方は少なくないように感じます。

でも、小学生のうちから本当にそれでいいのでしょうか。子供によって抱えているものが違いますし、一概には言えませんが、子供が嫌がっていたとしても、教室へ行けるよう背中を押してあげることは必要だと私は思います。保健室は安心できる空間かもしれませんが、子供にとってずっといて楽しいところでは決してありません。

保健室は、友達と協力したり時にはケンカをしたりすることが十分にできる環境ではありませんし、保健室登校の子は保健室にいるから他の子と違って特別という気持ちを少なからずもっていると思います。その結果、小学生のうちに自然と学ぶはずのコミュニケーション能力や社会性が身につかなくなってしまうことも多いのです。勉強なら家や塾、保健室でもできますが、集団生活は教室でしか学べないのです。

教室復帰のために大切なことは?

不登校や保健室登校の子供が教室復帰をするために大切なことは、周囲の人たちの理解とサポートだと思います。教室へ入れなくなってしまう子たちは、AちゃんやBちゃんのようにそれぞれ何かしらの不安を抱えています。周囲の人たちが温かく見守り、いろいろな形で支援していくことで、少しずつ心の元気を取り戻し、教室へ入るきっかけをつかめるのではないでしょうか。

保健室登校ができたとしても、保健室の先生だけでなく学校全体や家庭の理解と協力も得られなければ教室復帰につなげていくことは難しいです。いろいろな家庭があり先生がいる中で、現実は厳しいというのが本音ですが、それでも、その子にとってどんな支援をしていくことがいいのか、みんなで話し合い支え合っていけるような雰囲気を大切にしています。

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